18歳の誕生日を待って、すぐに車の運転免許証を取得した僕は、当時つき合っていたガールフレンドをドライブに誘った。
まだ運転も未熟だったし、道もよく知らなかったのだが、目的地は鎌倉と決めていた。
その頃、僕たちの間では〈初めてのドライブ〉と言えば、鎌倉だったのだ。
距離的なことと、〈鎌倉〉という地名が持っているロマンティックな響きから、そう思っていたのだろう。
大人になってからも、何度か鎌倉にドライブに出かけた。
第三京浜から横浜新道を抜け横浜横須賀道路の朝比奈インターで降りて、朝比奈峠を下ったら鶴岡八幡宮の脇に出るのがいつもの道順である。
鎌倉に着いてからは、車を駐車場に入れ、ぶらぶらと散歩するのがいい。
時間が許すなら、地図は持たずに、「あっちに行ってみよう」という勘だけを頼りに歩いた方が面白い。
意外な所に意外な店があるのだ。〈初めてのドライブ〉で、鎌倉へ行った時、僕と彼女は何の当てもなく歩き続け、偶然見つけた雰囲気のいい喫茶店に入った。
後で、それが、有名な「邪宗門」という喫茶店だったことを知ったのだ。地図で「邪宗門」を探しながら行ったのでは、感動も違うだろう。
僕と彼女が見つけたのだ。
それが証拠には、僕は未だに「邪宗門」に対して、特別な想い入れがある。
〈初めてのドライブで鎌倉に行った時、偶然、入った喫茶店〉
この思いでは、一生ものだ。
有名だから行ったのではない。
僕たちが他愛ないことを話しながら、行き着いた喫茶店なのだ。
鎌倉は歴史のある街だが、訪れる人の歴史も作ってくれる。